
【設備の修補責任】「免責にしたから大丈夫」は本当?売主が知っておきたい告知義務の落とし穴
こんにちは。中川 朋樹です。
以前の記事で、「契約不適合責任」についてお話ししました。
その中で、売買契約において「免責」とする取り決めがあったとしても、
それだけで売主が何も気にしなくていいわけではないという点に少し触れました。
今回は、その中でも特に分かりにくい「設備の修補責任」について、もう少し掘り下げてお話しします。
不動産を売却する際、売主と買主の間で、設備についての修補責任を免責とする取り決めをするケースがあります。
「免責なら、引き渡し後に設備が故障しても、売主は対応しなくていいんだ」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、免責の取り決めがあったとしても、売主が把握していた不具合を買主に伝えていなかった場合などには、
別途責任が問題になることがあります。
今回は、同業者から聞いた設備トラブルの事例をもとに、
設備の修補責任と、売却前に知っておきたい「告知」のポイントについてお話しします。
そもそも「設備の免責」とは?
中古物件を売却する際、
売主と買主の間で、設備についての修補責任を免責とする取り決めをするケースがあります。
簡単にいうと、設備について、引き渡し後に不具合が発生した場合などの修補責任を、
売主が負わないという契約上の取り決めです。
これは売主が一方的に決めるものではなく、売買契約の条件の一つとして、
売主と買主の間で合意したうえで契約書に定められます。
古い物件や、設備の状態に自信がない場合など、
売主側としては「免責にしておけば安心」と感じるかもしれません。
ですが、免責の特約があっても、把握している不具合を買主に伝えなくてよいというわけではありません。
ここは、売却する際に特に注意していただきたいポイントです。
実際に起きたトラブル
ある中古物件の売買で、
契約書には「設備の修補責任は免責」という特約がついていました。
ところが、引き渡し後に買主から連絡が入ります。
「インターホンが動かないんですが……」
調べてみると、売主は引き渡し前からインターホンが故障していることを知っていました。
しかし、そのことを買主にも仲介会社にも伝えていなかったのです。
結果として、引き渡し後に費用負担をめぐる食い違いが生じてしまいました。
免責の取り決めをしていたにもかかわらず、です。
なぜ「免責」でも問題になるのか?
「設備の修補責任を免責する」という取り決めは、
設備について、売主が一定の修補責任を負わないことをあらかじめ決めておくものです。
ただし、売主が不具合を知っていながら、それを買主に伝えずにいた場合まで、
「免責だから大丈夫」となるわけではありません。
民法572条では、売主が知りながら買主に告げなかった事実について、
担保責任を免れることができない旨が定められています。
ただし、設備の修補責任に関する免責と、契約不適合責任全般に関する免責は、
必ずしも同じものではありません。
また、免責の特約があるからといって、売主が必ず責任を免れるわけでも、
必ず修理費用を負担するわけでもありません。
実際の責任の有無や範囲は、契約内容や不具合の状況など、個別の事情によって異なります。
つまり、「免責」と「知っている不具合を伝えなくてもいい」は別の話なのです。
買主からすれば、「購入する前に知っていれば、
修理費用を考えて購入を判断したのに」ということにもなりかねません。
だからこそ、売却時には「免責だから大丈夫」と考えるのではなく、
自分が把握している設備の不具合は、きちんと伝えておくことが大切です。
「知らなかった」と言えば大丈夫?
ここで、一つ疑問に思う方もいるかもしれません。
「もし売主が『そんな故障、知りませんでした』と言ったら、どうなるの?」
売主が事前に故障を把握していたかどうかは、
一つの事情だけで決まるものではなく、さまざまな状況を踏まえて判断されます。
例えば、次のような点が確認されます。
■ 設備表には何と書かれている?
売却時には、設備の状態を確認するための「設備表」を作成することがあります。
そこに「不具合なし」と記載されている設備について、引き渡し後すぐに問題が発覚した場合には、その記載内容や、設備がどのような状態だったのかなどを確認する必要があります。
■ 設備そのものに故障の痕跡がある?
設備の状態を確認した際に、以前から故障していたことをうかがわせる痕跡が見つかる場合もあります。
例えば、長期間の水漏れによる腐食など、故障の時期を判断する材料があれば、売主がいつ頃から把握していたのかを考えるうえで参考になります。
■ 売主は実際にその設備を使っていた?
引き渡し直前まで普通に暮らしていて、日常的に使用していた設備であれば、「まったく気付かなかった」という主張についても確認が必要になります。
一方で、長期間空き家だった場合や、すでに遠方に引っ越していた場合などは、
本当に知らなかった可能性も考えられます。
このように、「知っていた・知らなかった」は、本人の申告だけで決まるものではありません。
売主ができる、シンプルな対策
売主ができる大切な対策は、把握している不具合を最初から正直に伝えることです。
設備に故障や不具合がある場合は、
設備表などにその内容を記載し、買主と共有しておきましょう。
例えば、
・「故障あり」
・「撤去予定」
・「現状のまま引き渡し」
など、実際の状態を明確にしておくことで、
引き渡し後の認識の違いやトラブルを防ぎやすくなります。
「正直に書いたら売れなくなるんじゃないか」と心配される方もいるかもしれません。
しかし、隠して売った結果、後からトラブルになる方が、
売主様にとって大きな負担になる可能性があります。
買主も、最初から状態が分かっていれば、その状態を前提に購入するかどうかを判断できます。
仲介会社の役割も大切です
こうしたトラブルを防ぐためには、売主が不具合を正直に伝えることに加え、
仲介会社が設備の状態について丁寧にヒアリングすることも重要です。
単に「設備に不具合はありませんか?」と尋ねるだけでなく、
給湯器や換気扇、水回りなど、設備ごとに具体的な状況や修理履歴を確認することが大切です。
また、物件の状況によっては、通水・通電や設備の動作確認ができない場合もあります。
そのため、仲介会社は可能な範囲で設備の状態を確認し、
確認できなかった部分についても説明することが大切です。
売主は把握している不具合や修理履歴を正確に伝え、仲介会社はその内容を丁寧に確認する。
双方が役割を果たすことが、取引後の認識の違いやトラブルを防ぐことにつながります。
株式会社RESTでは、売主様から設備の状態や修理履歴などを丁寧に聞き取り、確認できる範囲の状況を把握したうえで、売主様・買主様双方が安心して取引できるよう、事前の情報共有とリスク説明を大切にしています。
売却をご検討の方で、
「設備の状態について何を確認しておけばいい?」
「故障している設備はどう伝えればいい?」
「免責についてよく分からない」
など、不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
引き続き、読んでいただけたら嬉しいです。
